らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

しおたにまみこ『さかなくん』

偕成社、2022

www.kaiseisha.co.jp

刊行当初(だったと思う、とにかくしばらく前)から、絵にものすごく惹かれて気になっていた。
水とかガラスとか泡とか、透明なものがきらきら光に透けているさまがもともと好きだし、繊細なタッチが魅力的だった。

しかし、なかなか実際に読む機会がなく、刊行から一年を経てようやく先日読むことができたのだが、うーん、期待していたのとはちょっと違ったなというのが正直なところである。

しおたにまみこ作品は、この直前に『たまごのはなし』を(たまたまそのときの都合で)半分くらい読んでいて、「もしかすると『さかなくん』もそういう展開でそういうオチかもしれないな」と思った、おおむねそのとおりのお話であった。

ブロンズ新社 - たまごのはなし

言っていることは全然間違っていなくて、むしろ正しくて、良いんだけど、あまりにもその正しさが言葉に透けてしまっていて、ちょっと……鼻白んでしまう……

いっそ文が一切なくて、全て絵だけで進行すればもっと詩的なのでは!?

『たまごのはなし』のほうは「コミュニケーションツールとしての言語の獲得」という問題が入ってくるのでこの方法は不向きだが、『さかなくん』に関しては、絵にちゃんと説明能力と説得力があるから、このまま文を取り去るだけでも、作品としてじゅうぶん成立するんじゃないだろうか。