らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

須川亜紀子「子供向けアニメの少女像」(3)

日本経済新聞 2024年2月21日 夕刊

www.nikkei.com

 興味深いのは、カードキャプターとして魔法のカードを集めるさくらに、親友の大道寺知世が常にかわいいコスチュームを手作りして着せていること。カワイイと強さの両立が、友情でサポートされているのだ。さくらは小狼という仲間(のちに大切な人)にも恵まれ、友情も恋愛も「仕事」も、欲しいものすべてを手に入れるHAVE-IT-ALLの少女なのだ。

 

本筋ではないところにぎゅんいーって言ってる。さくらちゃんにとって知世ちゃんは親友で知世ちゃんとのあいだにあるのは友情だけど、知世ちゃんにとっての「好き」は友情じゃなかったんだよ(と本人が明言している)……。

記事の本筋にもこの表現にも異議があるわけではないです。あくまでさくらにとっては友情だったし、小狼くんのことを「大切な人」と称しているあたりからも筆者がCCさくらの世界観を尊重しているのだろうことも窺えるし(とはいえ作中でキーワードになっているのは「一番好きな人」ですけどね*1)(一番って何? さくらは知世ちゃんより小狼くんのほうが好きってこと? それって比べて順位をつけられるものなの?*2)(人間がわからなすぎて大の字)。

 

CLAMPカードキャプターさくら』(全12巻、講談社

ccsakura-official.com

 

*1:クロウカードがもたらす「災い」とはクロウカードに関わったものたちが一番好きな人を忘れてしまうこと、というストーリー上の設定と、「さくらの一番好きな人は誰か」というもう一つの主軸が重なっているのがCCさくらの上手いところです。

*2:2024/2/24追記 ひともそのひととの関係性もそれぞれ固有のものなのだから(せいぜいざっくりした大きさくらいでしか)比べようがないでしょ、という気持ちもつよいけど、「いちばん」というポジションが関係を保証してくれるのではないかと思ってしまうのも、保証されている関係のあらまほしさもわかる。心がいっぱいあるので。