らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

『シャドーハウス』

youngjump.jp

shadowshouse-anime.com

 

アニメをきっかけに手に取りましたが、アニメも原作も、どちらもとてもおもしろく、良い作品でした。
原作の、世界観に合った繊細な絵柄やコマの端々の小さな遊びと、アニメのくりっとしたかわいらしい絵柄と生き生きとした動き、どちらもとても好き。

主人公たちが少しずつ互いを知り、協力しあいながら、自らの知恵と勇気、そして個性的な能力によって、都合のいい情報しか与えない「大人たち」に対抗していくストーリーはもちろん、描かれている理不尽は、実際には昔も今も社会の中にしぶとく根を下ろしているのだというところも王道の少年少女ファンタジーで、児童向けファンタジー小説で育った身には大変なじんだ味わい。
そうしてシャドーハウスの謎を解いていくなかで、人間を人間らしくするのは何なのか、反対に人間から人間性を奪うのは何なのか、ひととひとを結びつけ、また分断するのは何なのかという普遍的なテーマが浮かび上がってくる。

何より、エミリコとケイトやショーンとジョンの、お互いにとって唯一無二の関係性が大変魅力的。
たとえはじまりがお仕着せの関係であっても、積み重ねた想いと時間が生み出した信頼は、本物の感情なのだと思う。

本のつくりも、巻頭のみならず巻末にもカラーイラストが収録されていたり、用語説明が付いていたりと、手許に置いておきたくなる。
カバー下の表紙デザインは特に、さりげないながら秀逸で鳥肌が立った。

あらすじ紹介の話者が途中の巻から変わっているのも気になるところで、今後この話がどう転がっていくのか、とても楽しみです。