らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

「お前たちの物語にはならない」

TBSドラマ『MIU404』

www.tbs.co.jp

※遠慮なくネタバレしています
※批評や考察ではなく感想覚書のようなもの、かつ、それぞれ放送当時に一度見たきりなので、記憶違いがあったり、当時の自分のツイート見返して足してる箇所があったりします。引用も不正確。最初からまた見返したいな。

 

テレビドラマを一クールきちんと追った経験があまりないのですが、この作品は毎回テレビの前で真剣に観ていた。
実を言うと、最初は「綾野剛星野源のコンビものなんて絶対に人気作になるじゃん」とちょっと斜に構えていたのだけど、話が問答無用におもしろくて、最後まで目が離せなかった。

 

#3を観たとき、ああ、この脚本を書いているひとは信頼できるなと思った。
(なぜそう思ったのか、もう記憶があやふやで見返さないと思い出せないんだけど、そうツイートしていた)

全話観た今だから思うというのもあるけど、倫理観や価値観が信頼できるというだけではなくて、助かったり助からなかったり、間に合ったり間に合わなかったりの匙加減が上手くて、完璧な絶望の一歩手前で手を引いてくれるから最低限の安心感があるのも、この作品の良さだと思う。
この回で最悪の展開を提示されていたら、たぶんそれ以上観ていられなかった……。
(#9のハムちゃんのことも、もっと残酷にしようと思えばできたはずだし現実だったらきっともっと残酷だっただろうけど、「間に合っ」てくれて本当に良かった。「誰かが最悪の事態になる前に止めることができるのが機捜」だもんね)

(あとこれはさりげなく画面に映ってただけだったけど、拉致された女の子を発見したとき、拘束を解いたりとかよりも先にまず伊吹がさっと自分の上着を女の子の膝に掛けてあげていたのが、すごくすごく良かった……伊吹藍、君は本当に信頼できる……)*1

 

はっきりとまじめに観ようと思ったのは#4だった。
青池透子が、自分のできる戦い方で自分の人生を取り戻したこと、そして、その人生が幸せだったかどうかは「おれらが決めることじゃない」と明言してくれたこと。
これがわたしのなかでの、「この作品をちゃんと観よう」と思う決定打だった。
(伊吹藍! 君は本当に信頼できる!)
そのひとの人生は、そのひとだけのもの。他人にその意味や価値を決める権利はない。

でもこの台詞のことを、しばらくするうちにわたしは忘れてしまっていたのだった。*2

 

「お前たちの物語にはならない」

作品にのめりこんでいくほど、話が話としておもしろくて、物語として物語を享受していて、久住に最後にこの台詞を叩きつけられて、呆然としてしまった。
観おわったあとも、まるく収まって新しく始まる「ここから」よりも、この台詞がぐるぐるしていた。

物語がおもしろいのは、物語になれば理解できるからだ。
ひとの人生は物語じゃない。他人の理解を拒むものだ。
それを、都合よく忘れていた。
それだけは忘れないでいようと、いつも思っているのに。
忘れていたことに気づかされた。

*1:書きながら若干自信を失いかけているのですが、これは伊吹だったよね

*2:それと、ここに至ってようやく、脚本家のお名前を調べて、色々と人気作を手がけられている方だと知りました。わたし自身、横目に数話見ていた作品も、幾つかあった。あまりまともにテレビドラマを観た経験がないので、一クール通して観ていた作品はなかったけれど。