らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

ニートの夜明け――『俺の話は長い』感想

『俺の話は長い』

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テレビドラマは、家のひとが観ているのをうしろから眺めるくらいのことが多くて、これも初回から観ていたわけじゃないんですが、久しぶりに、自分でも最後まで観たいと思ったドラマだった。
言葉の応酬がおもしろくて、それぞれキャラが立っていてキャストの演技もはまっていて、そしてバランス感覚に優れた良い作品だった。
30分ずつの2話で1セットになっているのも、連作短編集のようにテンポよくまとまっていて楽しかった。

満の天邪鬼さが、話す調子や表情一つひとつに表れるたびに、ひとりですごく共感してしまった。
最終話でも、みんながわいわい乗り気になっているときに俺は行かないよって言い出したり、それが「もともと最後の日は記念にすき焼きを食べたいと思ってたのに……」と拗ねてしまう気持ちが、あまりにもよくわかる。

 

やっぱり満はコーヒーを淹れるのが好きで、ひとと喋ることが好きで、そうやってこたつみたいにひとの心をゆるゆるに温められるひとだから、コーヒー屋さんが正解なんじゃないのかという思いがずっと捨てられなかった。
その一方で、そこに快適で収まりのいい答えが『たまたま』用意されていたから『たまたま』そこに収まれた、という形で終わってしまったら、作品にする意味がないとも思っていて、だから、どんな終わりを迎えるのか、どこか試すような気持ちで観ていた。

本当にあれで議員秘書になれるかどうかわからないし、採用されたとしてまたすぐに辞めてしまうかもしれない。
それでも、周囲のエールのなかで自分で次の道の始まりに辿り着けたということ、それに意味があるんだと描いてくれたのが、とても良かった。

 

どうして最初のお店が上手くいかなかったのかわたしは知らないけど、進んでいく道の先にいつか、ポラリスのカウンターに立つ日が来てほしいな。