岩波文庫の関泰祐・望月市恵訳(1988)を参照しました。
一部の侮蔑的な表現を含め、参照した訳文の表現をそのまま用いていますが、漢字かなづかいなどは厳密ではありません。引用などの際は元の表現をあたってください。
章が進むごとに情報や人物が増えていくと思われるので、この記事には3章までの内容を載せています。
次章以降は別の記事にまとめます。
基本的に登場順。
誰がのちのちまで登場するのか現時点ではわからないため、なるべく網羅的に列挙。
ハンス・カストルプ
:主人公。ハンブルクの名門カストルプ家出身。赤みがかったブロンドの単純な青年。もうすぐ満24歳。八月の3週間を「ベルクホーフ」で過ごす予定。34号室に滞在。貧血気味で三食のあとにイギリス産黒ビールを飲むよう主治医に指示されているが、それ以外は健康。贅沢好きで努力しない。善良で、どちらかといえば平凡。5歳のときに母が、7歳のときに父ハンス・ヘルマン・カストルプが亡くなり、祖父ハンス・ローレンツ・カストルプに引き取られるが、祖父も一年後に肺病で亡くなる。かすかに低地ドイツ訛り。マリア・マンチーニというシガーを愛している。ダンチッヒ工科大学、およびブラウンシュヴァイクとカールスルーエの工科大学で造船を学び、トゥンダー・アンド・ヴィルムス商会にエンジニアとして入社する予定。
※国際サナトリウム「ベルクホーフ」
:スイス、グラウビュンデン州、ダヴォス・プラッツにある。海抜1600m(ダヴォスの村および街と、療養所との間にも50mの高低差がある)。
ティーナッペル領事
:ハンス・カストルプの大叔父(母の叔父)で育て親。ぶどう酒商人。カストルプ家の遺産を整理してハンス・カストルプの相続財産40万マルクを残してくれた。ハルフェシュテフート通りに面した家に住む。
ヨーアヒム・チームセン
:ハンス・カストルプの従兄(ハンス・カストルプの母の、腹違いの姉の息子)。軍人志望。黒髪黒目。カタルを患い5か月前からサナトリウムに入っている(ハンス・カストルプの右隣)。
ちんばの門番
:「ベルクホーフ」の門番。戦争でひざを負傷した元兵士。
フランス人風の小使
:「ベルクホーフ」の使用人
ロシア人の夫婦
:ハンス・カストルプの左隣に滞在している。食事の際は「二流ロシア人席」に座る。夫が患者。夜じゅううるさい。夫は革のジャケツを着て食事に現れる。妻はほっそりとして小柄、帽子に羽根飾りをつけ、汚れた鳥の羽根のボアを首に巻いている。
ベーレンス
:「ベルクホーフ」の院長。ドクトル・ベーレンス、ベーレンス顧問官とも。ひどい下サクソニア訛り。骨太で大柄、白髪青目、獅子鼻、ちょびひげで顔は青白い。愛煙家。油絵を描く。「顧問官」の称号は、行状の悪い結核性脳膜炎の王子から賜った。
「アメリカ娘」
:ハンス・カストルプの前に34号室にいた患者。ハンス・カストルプが到着する二日前に死亡。婚約者はイギリス海軍の軍人。
「アマチュア騎手」
:おそろしい咳をしていた患者。オーストリアの貴族で「アマチュア騎手に生まれついたような人」。
「三十歳くらいの婦人」
:人間嫌い。幼い頃からサナトリウムに入っているという噂。
食堂嬢
:レストランの給仕。愛想のいい娘。
シュテール夫人
:カンシュタットの音楽家の妻。重症患者。無教養でゴシップ狂。油じみた灰色のブロンドで赤ら顔。唇をめくりあげて話す。7か月滞在している。
イルティス夫人
:シュテール夫人曰く、短刀を忍ばせているという。
ドクトル・クロコフスキー
:代診。35歳くらい。肩幅がひろく肥っているが、背は低い。白髪交じりの黒髪、黒目、二つに分かれた長い頬ひげ、青白い顔。精神分析に凝っている。
ハンス・ヘルマン・カストルプ
:ハンス・カストルプの父。妻(ハンス・カストルプの母)の死による精神的な打撃がもとで、カストルプ父子商会の経営に失敗する。肺炎により死亡。
ドクトル・ハイデキント
:ハンス・カストルプの主治医。ハンス・カストルプに転地療養を勧めた。ハンス・カストルプの両親も治療した。
ハンス・ローレンツ・カストルプ
:ハンス・カストルプの祖父。ハンブルクの市参事会員。カルヴィン派の保守的な人物。
フィーテ老人
:ハンス・ローレンツ・カストルプに仕えていた人物。ハンス・ローレンツ・カストルプと低地ドイツ語で話す。
ジェームズとペーター
:ハンス・カストルプの叔父(ティーナッペル領事の息子)。一人は父のぶどう酒業を手伝い、もう一人は海軍に所属。
ブーゲンハーゲン牧師
:ハンス・カストルプに洗礼をした牧師。ハンス・ローレンツ・カストルプの葬儀も行った。
シャレーン
:ティーナッペル家の家政婦で、ハンス・カストルプの母代わりとなる。アルトナの金細工師の娘。
ヴィルムス老人
:トゥンダー・アンド・ヴィルムス商会の経営者。ハンス・カストルプが将来の職を決めるきっかけになった。
ドクトル・エーベルディング一等軍医
:ティーナッペル家の主治医
「二人トモ」
:5週間前から滞在している、陰気な中年の婦人。黒ずくめで庭を歩き回っている。青白い顔のメキシコ人。ドイツ語は話せず、フランス語も2、3語の片言しか知らない。2人の息子が死にかけている。
食堂嬢
:患者や宿泊者の食事を給仕する小人
「裁断師」(エンゲルハルト嬢)
:顔にうぶ毛の生えた、見ばえのしない黒服の婦人。実際はケーニヒスベルクの公立女子高等学校の先生で、言葉遣いが正しい。5か月滞在している。
「イギリスの令嬢」(ミス・ロビンソン)
:野ばらの煎茶を飲んでいる、醜い老嬢。ドイツ語は全く解さない。
「うすい口ひげの若い男」(ドクトル・レオ・ブルーメンコール)
:ハンス・カストルプに紹介されるのを断った。よく話しかけられているがむっつりしている。ともに食卓を囲んでいるなかでは最も重症で、何年もサナトリウムにいる。
ヨーグルト嬢
:痩せこけた、うすいブロンドの若い娘。ヨーグルトばかり食べている。一年中サナトリウムにいる。
ヘルミーネ・クレーフェルト
:もじゃもじゃの髪とにぶい目をした、のっぽの少女。『片肺クラブ』の花形で、気胸を鳴らすことができる。
※『片肺クラブ』
:気胸の手術を受けた患者たちの集まり
唇の厚いずんぐりした青年
:小柄で肥っている。『片肺クラブ』のメンバー。
レーヴィー嬢
:竹竿のように細く、顔が象牙色の婦人。『片肺クラブ』のメンバー。
イルチス婦人
:そばかすの多い肥った婦人。『片肺クラブ』のメンバー。
バルバーラ・フュス
:1か月半前に亡くなったカトリックの少女
セテムブリーニ
:「手まわしオルガンひき」を連想させるイタリア人の紳士。30代らしき外見。若々しいがこめかみは白髪交じりで、禿げかかっている。口ひげ。黒目。文学者でカルドゥッチの弟子。人文主義者。父も祖父も文学者だったという。4階の裏の小部屋に滞在。再発が多く何年も「ベルクホーフ」にいる。
アドリアチカ
:婦長。フォン・ミュレンドンク一族の出身。
元気な老婦人
:小柄。ロシア語を話す。ヨーグルト嬢の大叔母で、ヨーグルト嬢とともにずっとサナトリウムにいる。
マルシャ
:豊満な、血色のよいかわいい娘。栗色の髪と鳶色の目。小粒のルビーの指輪をしている。ロシア語を話す。よくハンカチを口にあてて笑っている。
ロシア人の一家
:醜い少年をつれた一家族。「二流ロシア人席」に座る。
ザーロモン夫人
:ブリュッセルから来ている
ミクロジッヒ大尉
:ブカレストから来ている
ウルムブラント総領事夫人
:ウィーンから来ている
フランツ青年
:19号室に滞在
パラヴァント検事
:ドルトムントから来ている
小学生くらいの少年
:まるい厚い眼鏡を掛けている。ハンス・カストルプの左隣の食卓に座っている。
マダム・ショーシャ
:若いロシア婦人。食堂に遅れて入ってきてガランガチャンとガラス戸を閉める。頬骨が高く、目は細い。うす赤いブロンドの髪を編み上げている。「一流ロシア人席」に座る。サナトリウムには誰も知り合いがおらず、夫も訪ねてこない。
なで肩の二人の紳士
:「一流ロシア人席」に座る。マダム・ショーシャと話していた。
アルビンさん
:ブロンド頭を短く刈り込んだ、ばら色の子どもっぽい顔をした青年。6週間肺炎で寝込んでいた。サナトリウムに入ってからは3年目。
大学生
:ヨーアヒムがサナトリウムに来る2か月前に首を吊った
ブロンドの頬ひげをはやした紳士
:胸がぺしゃんこで目がでっぱっていて、ぐんにゃりしている。マダム・ショーシャと話していた。
30歳くらいののっぽの男
:髪が薄くなっている。ピアノを弾いている。
オティーリエ・クナイフェル
:高級官吏の娘。1年半ほど「ベルクホーフ」で過ごし健康になったが、サナトリウムを出たがらなかったという。