らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

『ハックルベリー・フィンの冒険』

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マーク・トウェイン千葉茂樹[訳]、岩波少年文庫

 白人のみが完全な人間で、それ以外の人間との間に歴然とした違いがあるという当時の感覚が本当にわからない。わからないけど、現代のわたしには全くわからないくらいそれが当時のかれらにとって当然の現実で、それが今も同じ土地で尾を引いていて、わたしにも、1世紀2世紀あとに人類が(まだ生きて過去に触れられるとしたら)21世紀のこれ理解できないなって思うようなグロテスクな「人間」の枠線の引き方をしている部分がある……のだろうな、きっと……今のわたしは気づいていなくても……というのを、心に留めておかねばならないと思った。
 一方で、作中に用いられている差別語について、差別語が存在しなかったことにしてしまうのは差別があった/あること自体を隠蔽してしまうのではないかとわたしは考えていますが(下記事参照)、訳者があとがきで述べていた、当時は平然とつかわれていた差別語をなるべく訳出しなかった、子どもたちにそのような言葉(が表す概念)が存在すると示したくないから、という意図も、非常に共感できる。差別というものの何たるかをきちんと学んでから、歴史的事実としてそのような差別があり、差別語があったことを学んでくれたらと思う。

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