中島みどり[訳]、1992(原著1988)
美しい恋愛小説として、そして共産主義体制が確立されていくなかでの知識人小説として、ユーモアを含んだ冷静な作品ながら次へ次へとひきこむ力をもち、訳文も平明で味わい深く、大変おもしろかったです。
また作品の読みごたえはもちろんのこと、訳者あとがきも、作品論と作家論をふまえた近代中国の簡潔な知識人研究として興味深かったです。
個人的な読書の手引きとして、登場人物一覧と用語集を作成しました。
この記事は登場人物一覧として、姓名と読みがなに、ネタバレになりすぎない程度の人物説明を付しています。
読書の手引きにどうぞ。
・年齢はおおよそ文学研究社の発足した1949年時点
・姓と名がはっきりわかっている人物名については、間に1マス開けて表記しています
・読みはルビで(すなわちどの文字も同じ大きさで)示されており、わたしも中国語の発音は全くわからないので、拗音は無視して記載しています
・「媽(マア)」は「中年または老年の女の召使の呼称」とのこと
cf. 中国語辞典(白水社)
〈登場人物一覧〉
- 余 楠(ユイ ナン)
- 宛 英(ユアン イン)
- 余 照(ユイ ジアオ)
- 杏娣(シンデイ)
- 張(ジアン)媽
- 孫(スウン)媽
- 姚 謇(ヤオ ジエン)
- 姚(ヤオ)太太
- 姚 宓(ヤオ ミイ)
- 沈(シエン)媽
- 羅 厚(ルオ ホウ)
- 郁 好文(ユイ ハオウエン)
- 許 彦成(シユイ イエンチヨン)
- 杜 麗琳(ドウ リイリン)
- 小麗(シアオリイ)
- 李媽
- 馬 任之(マア レンジ)
- 王 正(ワン ジヨン)
- 傅 今(フ ヂン)
- 江 滔滔(ジアン タオタオ)
- 施 妮娜(シ ニイナ)
- 汪 勃(ワン ボオ)
- 丁 宝桂(デイン パオグイ)
- 朱 千里(ヂユ チエンリイ)
- 陳 善保(チエン シヤンバオ)
- 姜 敏(ジアン ミン)
- 范 凡(フアン フアン)
- 黄土(ホアントウ)
- 方 芳(フアン フアン)
- 肖 虎(シアオ フ)
余 楠(ユイ ナン)
三流大学出身でアメリカでの留学経験あり。上海の三流大学で教えるかたわら文筆業を請け、のちに雑誌の編集長を経験した。息子が2人と娘が1人あり、息子たちは北京の大学に入っている。浮気性、やや肥りかけている中肉中背。外国文学組。
宛 英(ユアン イン)
余楠の妻。40歳。肥っており胃痛もち。余楠の母と宛英の継母とは姉妹どうし。
余 照(ユイ ジアオ)
余楠と宛英の末娘。16歳。体格がよくすらりとしている。上海の教会女学校(ミッションスクール)に通っていたが、のち余楠に伴って引っ越し、北京の中学校に入る。
杏娣(シンデイ)
余家の女中?
張(ジアン)媽
(上海での?)余家の女中。
孫(スウン)媽
(北京での?)余家の女中。
姚 謇(ヤオ ジエン)
中国文学の教授。「北平国学専修社」の社長だったが重い心臓病を患っており、1945年、日中戦争勝利の前夜に55歳で亡くなる。
姚(ヤオ)太太
姚謇の妻。留学経験がある。姚謇の死をきっかけに1945年夏至前夜、中風で半身不随となる。
※名は作中で明示されていない
姚 宓(ヤオ ミイ)
姚夫妻のひとり娘。1945年時点で20歳前、大学2年生だったが学業を諦め図書館員となる。のち外国文学組に。
沈(シエン)媽
姚家に通っている女中。
羅 厚(ルオ ホウ)
姚宓の大学の同窓の青年で、姚家の遠い親戚。育ての親である母方の叔父は民主人士(共産党の協力者で、社会的影響力のある有力者)。院卒。濃い眉が時計の10:10の針のような格好のため「十時十分」とあだ名されている。外国文学組。
郁 好文(ユイ ハオウエン)
図書室での姚宓の助手。ふっくらした女性。
許 彦成(シユイ イエンチヨン)
天津出身で一流大学を卒業。生まれる前に父がなくなり、母と共に伯父伯母夫婦の許で暮らしていた。アメリカ、のちにロンドン大学にも留学。外国文学組。
杜 麗琳(ドウ リイリン)
許彦成の妻で同じ大学の出身。文学士および教育修士を海外で取得。「標準美人」とあだ名されている。天津のブルジョワ家庭出身。アメリカへの留学経験あり。外国文学組。
小麗(シアオリイ)
許彦成と杜麗琳の娘。4歳。
李媽
許杜家の女中。
馬 任之(マア レンジ)
国学専修社では姚謇の助手を務めていたが、文学研究社の社長になる。共産党の地下党員だった。古典文学が専門で古典文学組の組長。
王 正(ワン ジヨン)
馬任之の妻。病弱。大学の中国文学科を卒業している。
傅 今(フ ヂン)
ロシア文学の研究者。文学研究社の副社長で外国文学組の組長。研究社に移ってきた余家のおとなりさん。共産党に入党した。
江 滔滔(ジアン タオタオ)
傅今の新しい妻で施妮娜の親友。小説家。外国文学組。
施 妮娜(シ ニイナ)
南方帰りの、河馬に似た女性。前の夫とともにソ連にいた頃に傅今と知り合う。外国文学組。
汪 勃(ワン ボオ)
施妮娜の夫。二枚目ふうの男。古典文学組。
丁 宝桂(デイン パオグイ)
余楠の母校の先輩である男性。かつての北平(=北京)国学専修社では顧問の老先生で、偽大学の中国文学教師だった。古典文学組。
朱 千里(ヂユ チエンリイ)
フランス文学の研究者でもとは偽大学で教えていた。10年ほどフランスで生活。恐妻家のセクハラ男。小柄で痩せぎみ。外国文学組。
陳 善保(チエン シヤンバオ)
姚宓に気がある青年。軍人から転業し、共産主義青年団支部の宣伝班長も務める。外国文学組。
姜 敏(ジアン ミン)
上海の大学を出た22歳の女性。小柄で華奢、色白で、しっとりと濡れた眼をした八方美人。庶出。陳善保に気がある。外国文学組。羅厚は陰で「上海のあまっちょ」と呼んでいる。
范 凡(フアン フアン)
研究社の事務室の主任。
黄土(ホアントウ)
中国現代文学理論の研究者。
方 芳(フアン フアン)
編んだ髪を2本ぴんと立てている、ふっくらした若い女性。図書室で勤務。
肖 虎(シアオ フ)
少し年かさの男。図書室で勤務。