らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

Question ――『ファーザー』感想

映画『ファーザー』

thefather.jp

ラストまでずっと、観客もどこまでが本当で何が真実なのか、わかるようなわからないような不安の中に置かれて、それがアンソニーの感覚と(完全に同じではないものの)重なっていて、最後の最後に「そういうことだったのか……」とわかる。
とはいえ、我々観客は何がどうなっていたのか把握できるけど、アンソニーはおそらく最期まであの記憶と現実の混濁の中に取り残されるわけで……救われようがない……。

冒頭から何度か用いられる、アンソニーがヘッドフォンでクラシックを聴いているときの音響演出も、「音楽を聴いていて外の音が聞こえていない」というのを表現する、やり方自体が目新しいわけではないものが、意図的にも無意識にも、ポジティブにもネガティブにも、アンソニーの外側との断絶を伝えていて印象的だった。

あのすてきな「私のフラット」からも引き離されたアンソニーの末路は、どうしても哀れに思えてしまう。でも、もちろんアンの行いが間違っているとは誰にも言えない。
どうしたらいいんだろう、わたしはどうするんだろう。