らいおんの瓶の中

手紙を海に流すように、いろいろな感想とか。

『ノマドランド』

映画『ノマドランド』
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 期待していたほどおもしろくなかった……。
現代アメリカ資本主義社会に対するアンチテーゼ、ではあるんだけど、それ以上の深みが感じられなかった(一度観ただけの個人的な印象としては)。
中盤から出てくるノマドのカリスマ宣教師みたいなおじさんはやばいひとなのかなと思ったら、全然そんなこともなく。
現代アメリカ社会で生きていたら、もっとクリティカルに自分の実存に迫ってくるものがあったのかもしれないけど。

経済的に成功した相手と結婚して安定した暮らしを送っている妹との、和解のシーンも、角度を変えた個人の能力主義のような……。
今ある社会の枠組みから外れて生きようとするならなおさら、他者と積極的にコミュニケーションを取る能力と姿勢が必要なんだなあと思いました。

ノマド生活の途中で知り合った、結局息子(だっけ)の一家と一緒に暮らすことにしたおじさんの生活が、いちばん満ち足りていて楽しそうだったな……。
主人公の女性も、今はまだ働けるし生きていけるけど、一生あの生活を送れるかというと運次第だろうと思う。あのひとにとって、亡くなった夫と訣別して前を向くためにはノマドになるのが必要なことだった、というだけで、今後もずっとノマドとして生きていくのかどうかはかなり微妙なところではないだろうか。